

乳頭が授乳の度に大きくなって行くように、鼻尖も身長の伸びが止まっても大きくなっていきます。16歳の可憐な少女の鼻と61歳の老女では鼻の大きさが違います。私がアンチエイジングの手術にシワ・タルミだけでなく鼻尖縮小を挙げるもの、そういう理由からです(症例写真)。
また美容外科従事者なら周知の事ですが、乳頭縮小は大きさにおいて術直後と比べれば3、4ヶ月経った時、少し大きくなっているように、鼻尖形成・縮小でも少し大きくなり気味です。私はこれは経験的に安静を保てなかった(つまり、頻繁に触る、ギブスのやり過ぎ)そういう人にハッキリ目立つように観ています。つまり手術侵襲から回復する際に組織増殖は生じるようです。整形外科的にも膝・肘の伸側部の傷は幅も広くなるし盛り上がるものです(肥厚性瘢痕)。従って傷に無理な力は掛けない。これが鼻尖形成・縮小術にも大事なのは間違いありません。ですから私は患者さんが自宅で使うギブスに対しては慎重なのです(どういうようにやってるか目が行き届きませんから)。
鼻尖形成・縮小の手術を多くの医師は不得手とし、鼻先で軟骨をちょっと縫い合わせて終わり程度で済まされている例は少なくないようです。このような例ではもちろん余剰な軟骨や軟部組織はほとんど切除されていません。それはこの手術の
細かい術式が確立していなく、術後の不確定要素もある中で、鼻プロテでも鼻先を尖らす事だけはできることもあり、積極的に取り組む医師が僅かだからです。
鼻尖縮小で上手く効果が出し難いのは、結局は皮膚が切り取れないからです。丁度、夏ミカンは身をくり抜いても、皮だけで形を保てるのと似ています。
鼻翼縮小(小鼻縮小)の場合は皮膚を切り取れるから、手術前から確実な効果が保証できるのと対照的に、鼻尖縮小は不確定要素が多く、狙った通りの結果が出し難いものなのです。
団子鼻の成因は、鼻尖部の皮膚の厚みと皮下の脂肪等の軟部組織(いわゆる肉)によります。鼻先は鼻翼軟骨(びよくなんこつ)で支えられ、白人はこれが張り出し立派ですが、鼻先が割れて見える人が多いのは皮膚・軟部組織が薄いからです。
白人は鼻骨と軟骨・が発達して全体的に大きい鼻ですが、東洋人は骨・軟骨が小さめで皮膚・軟部組織が多く全体的にダンゴの傾向です。しかし鼻尖の軟骨だけ立派な人も居て、これを小さく細くしたいという人は主に鼻翼軟骨内側脚正中移動(=縫合)&軟骨切除です。 しかし鼻尖が肉厚で明らかに団子鼻の人は軟骨より軟部除去主体となり、皮膚も壊死しない程度に裏から削ぐ必要があります。それは鼻尖の皮膚独特の皮脂腺の多い厚く硬い皮膚は、まるで形状記憶合金のような、元の形を維持しようとしますから、裏から削いで形状回復力を減衰させるのです。
そして鼻尖を挙上させたくなければ、切り取った軟骨を再利用して鼻先に移植となります。軟骨が足りなくて軟部組織を移植材料として足す場合もありますが、萎縮率は高いです。手術が再手術の場合は瘢痕の硬いものがあれば、それを軟骨に足して移植材料にすることもありますが、経験的にそれほど萎縮しないようです。
術後は石膏ギブスや熱可塑性スプリントで外固定します。これで皮膚と軟骨をくっつけますが、基本的に5〜7日間ギブスはそのまま外しません。
鼻尖形成術は左右の鼻の穴の中を切開するわけですが、どうしても隙間から覗いての手術になるので、慣れないうちは感が働かず、キレイに細くは出来ないものです。これに対して切開を鼻孔縁と鼻の穴と穴の開にも加えば、鼻先の皮膚は鼻の内部を開く用に持ち上げられ、中は丸見えにできます。これを「オープン法」と巷では呼びます。それに対してこの外からの切開を加えない鼻穴内切開だけの方法は「クローズ法」と呼ばれます。 
一般にオープン法は、中が良く見えるから初心者でも鼻尖縮小の効果を出し易い術式で、クローズ法は視野が狭く手術の勘所が働く人でないと上手く内部処置できずオープン法より効果が出し難い術式と言われます。しかし私の個人的見解ですが、ハッキリ細くするような十分過ぎる皮下での処置は、鼻尖部の皮膚の血行を悪くしますので、これは実はクローズ法の方が鼻橋部(鼻柱)からの血行があるため皮膚壊死などの重大な合併症を起こし難い利点があります。そのため内部処置がしっかりできるので、しっかり細くする手術はクローズ法に限ると言えます。
なお、オープン法の傷は後々あまり目立ちませんが、消えるわけではありませんから、見る人が見れば5年経っても分かりますし、オープン法の傷は時に拘縮により段差を生じてしまうことがあり、これになると修正は大変困難です。
この上がった感じが、ピエロの横顔の鼻を見ているようで美しくありませんから、通常は軟骨の部分切除で対応します。しかしそれだけでは、鼻先が上がった感じ自体が治らないので、部分切除で削った軟骨を鼻先のやや下目に移植する(軟骨移植)とバランスが取れるものです。
術後早期の時、丁度良い細さだった鼻尖も術後3ヶ月も過ぎるようになると、後戻りして以前の自分の鼻に似てきたと感んじる様になる事はしばしばあります。皮下の切除された組織の修復で、結合組織が形成されたり、皮脂腺の多い硬い皮膚が形状記憶合金のように、3〜4ヶ月かかって、元の丸い鼻に戻ろうとするのです。 これに関しては術後しばらくして、自宅で使う専用ギブスを就寝時のみでも毎日使う事で対応はしますが、ギブス使用は適度な力を持続させるような使用法が大事です。
術後すぐにギブスで圧迫・固定するのはこの手術で必須です。これは皮膚と軟骨の圧着を図るもので皮膚移植に準じた加療です。
ただ医師の中には、この外固定の圧迫を過度に行い、患者さんには抜糸後も自宅で金属製ギブスを使って引き続き強力に圧迫を指導する者がいるそうです。その施設では手術自体は1時間程で、これではたぶん内部処理は不十分ですから、それを補う上での過剰な圧迫だと思います。過剰な圧迫を長い期間続けると、血行障害などで組織の萎縮が起きて正面から見れば確かに鼻が細くはなります。しかし横から見れば摘まれた鼻のように鼻尖の上に軟部がはみ出て、尖りのない不自然な鼻になるものです。外固定は必要ですがそれは手術をキチンとやった上での事と思います。
また鼻尖形成術後にギブスでなく
テープだけの圧迫をする医師がいますが有効な力は鼻尖の鼻孔縁付近のみ掛かるだけで、不十分ですし、引き続き自宅での圧迫のケアをテープで指導するのは、私からすれば毎日テープを剥す度に組織を引き剥がす力が加わり、これが組織増大を起こすのではと危惧します。
自宅でのギブス使用は、瘢痕形成抑制目的の圧迫治療や皮膚の形状の恢復による鼻尖の太さの後戻りの予防や治療の目的と考えます。
しかしギブスを熱心に使った患者さんの中に術後当初に細かった鼻尖が太くなった例が散見します。逆にギブスを使用させなかった症例の方が、あまり太くならず成績が安定している傾向があります(もっともこれはギブス使用の患者さんは太くなる予兆があったからギブス使用に踏み切ったので、一概には述べられませんが)。
術後、特に早期にギブスを使う事は、脱着の繰り返しによるマッサージ効果としての炎症の再燃、過大な力ではズレ応力による癒着部の剥離・空洞形成→治癒機転として肉芽が生じて太くなると伴に、空洞を小さくする拘縮作用で鼻尖・鼻翼の増大・変形を起こす事はあり得ます。私はそういう人も見てきましたので、術後の自宅でのギブス使用では「一瞬でも強い力をかけるのは危険!」と指導をしています。(下の写真はギブスで早期に過大な力を加え続け変形が生じた症例)